非常に強い勢力を保ったまま北上を続ける台風15号、そのような中、神奈川県に直撃する予想時
刻に自宅から講義先まで移動しなければならなくなった。講義先では250人が待っている。
欠席や遅刻は許されない・・・さあ皆さんならどうしますか?
おそらく電車は止まると判断。車も渋滞はするが、いつも40分程度かかるところを、約3時間前に
余裕を持って出かけることにした。
10分後、高速道路は閉鎖、そのため国道はすぐに渋滞、電線や街路樹は大揺れ、車道には多く
のものが散乱、迷ったあげく講義先に連絡をし、最悪な場合を伝言した。
ナビも無いまま脇道に入り、ワイパーを最速にしながら何とか近づいたが、相模川を渡る橋の手前
で大渋滞・・・全く動く気配がなくなった。ここでなんと残り30分・・・皆さんならどうしますか?
残り約5㎞、再び講義先に電話をし、大遅刻する旨を伝言した。「悔しい・最悪だ!」
ここで車を置いていくことを決断し、脇道に入りコインパーキングに駐車、その直後、辺りは停電と
なり真っ暗な状態、辺りを見渡すと一軒家のガレージに微かな人影と自転車が見えたので近づき、
状況を早口で説明、名刺や免許証を差し出しながら怪しいものではないことを必死に説明し、運良
く自転車を借りることができた。ここで残り25分
大雨・強風の中勢いよく出発したのも束の間、何故かペダルが重い・・・空気圧が足りなくほとんど
パンク状態であった。こんな時に何故・・・
引き返す余裕もなく、橋の手前に差し掛かった時、警察に止められ、「お前死ぬ気か?」 と一喝!
ここから先は通行止、橋の上で大型トレーラーが2台横転しているとの情報、どの橋もすべて通行
止らしい・・・「もうだめだ、終わった・・・」
そう思って引き返そうとしたところ、自転車(押すこと)や歩行者のみ通行可能という知らせが無線
で入った。「よし、いけるぞ!」ここで残り20分
しかし、橋の頂上まで行くと想像をはるかに超える突風が吹いていた。
なんと、自転車を押したままの状態で一瞬体と自転車が宙に浮き、歩道にいたはずが気が付いた
ら車道の中央まで約5mを横にそのままスライドしてしまったのである。
本当に凄まじかった。(後で確認したところ、なんと最大瞬間風速は50m/秒)
横転しているトレーラーを横目に見ながら何とか渡り切り、残り約15分・・・
摩擦式のライトのため、余計に重く感じるペダルを立ちこぎしながら必死で進み、車道に散乱してい
る木の枝等をバキバキ踏み潰しながらとにかく前へ進んだ。幸い停電のため信号もそのまま突き
進み、最後の大きな交差点で残り3分だった。「いける・いける・絶対いける!」
腿がパンパンになりながらも昔、トライアスロン競技に出たことを思い出しながら最後まで気を緩め
ずこぎ続けた。講義会場の裏門から入り、自転車を止め、すぐに携帯で担当者に連絡、「間に合い
ましたよ!」の一言に担当者は絶句、「本当ですか・・・」 その時、講義時間まであと1分であった。
何と間に合ったのである。
結局、何事も無かったように250人の前で挨拶をしようとしたら、全身はずぶ濡れだし、大量の汗
は全身から吹き出てくるし、息が大荒でまともに話すこともできないし、「3分だけ落ち着く時間をくだ
さい・・・」 と、結局遅刻したようなスタートになってしまった。(笑)
しかしまだ話は続くのである。
2時間の講義を無事に終え、自転車を返すために空気を満タンにし、コンビニでお礼の品を買い、
間に合った余韻に浸りながらゆっくり向かっていた。(タイヤの空気を入れても何故か重いペダル)
街は停電中、橋は未だ通行止で、トレーラーも横転したまま。
借りたお宅に到着し、「おかげさまで間に合いました!有難うございました!」と報告したところ、
「よかったわねー、電動機付自転車だから楽だったでしょう・・・昨日充電したばかりよ」 と一言
「えーっ、で・で・で・電動機付?」 停電している中、さらに余裕もなかったため、全く気づかなかっ
た。その事を伝えると、「電源入れなかったら、逆に重たかったでしょう・・・」 と一言
「ガァーーーン・・・・」 一瞬言葉を失いましたが、何とか気持ちを整理し、平常心を保ちました。
そしてさらに悪夢は続いたのです。
止めたコインパーキングも停電により動かない状態でしたので、帰れません。
管理事務所に連絡したところ、「電気が復旧する見込みがないため、自力で突破してください」と…
「そんなことできるのでしょうか? タイヤがパンクしたりしませんか?」 と聞き直したら、
「やったことはありませんが、それしか方法はないので頑張ってみてください」と…
さらに、「突破できたら料金は要りませんので、そのまま脱出してください」と…
もうやるしかなかったので、恐る恐る前進し、ストッパーに引っかかったところでアクセルを全開、
「ブゥーン・ブゥーン・ガーン・ガコッ・ボコッ・ガーン」というような聞いたこともない音を立てながら
無事に脱出成功!タイヤのパンク等は無いものの、罪悪感を残して引き揚げました。
帰宅後は寝ている妻を起こし、一部始終を興奮しながら語ったことは言うまでもありません。
「最後まで諦めない・・・」 この言葉がものすごく身体に沁(し)みた出来事でした。
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